小売業大手のイオンが、2020年までに50のデイサービス施設開設を目指すと発表して本格的に介護事業に参入してきました。通い慣れたスーパーにデイサービスができれば、高齢者にとっては行ってみようという気持ちになりやすいのかもしれません。
異業種からの介護業界への参入は、介護保険の開始時に一度大きな盛り上がりがありました。隣接業界である医療はもちろん、不動産業界、小売業界、保険業界のほか、さまざまなメーカーも参入してきました。その後、2006年の新予防給付スタートで介護予防に注目が集まったときにも、スポーツやリハビリ関連企業が多く参入してきました。さらに、サービス付き高齢者向け住宅が一気に増えた時には不動産業界などからの参入が目立っていました。
そして今、参入してきている企業には大きく2つの傾向があります。1つは2017年度末までに各市町村がスタートするとされている、介護予防・日常生活支援総合事業の受託を目指した動き。運動系リハビリや認知症予防の教室運営の受託を目指し、スポーツクラブなどが力を入れています。もう1つは、高齢者それぞれの趣味や興味に合わせたプログラムを提供する動きです。これは異業種からの参入だけではなく、介護事業者の多角化の場合もあります。
これにはさらに2つのタイプがあり、1つはデイサービスなどの利用に消極的な、男性高齢者の興味を引くプログラムを提供する企業。これらの企業は、総合事業への参入も視野に入れて動いています。もう1つは、介護保険事業以外の収益源を確保するための事業を行っている企業です。
男性高齢者の興味を引くプログラムといえば、これまでは囲碁や将棋、麻雀などが主流でした。もちろん今もありますが、それに加えて徐々に増えつつあるのが、ルーレットやカードゲームを楽しむカジノ、スロットマシーンなどのアミューズメントプログラムです。本物のカジノ機材、スロットマシーンなどをデイサービスや総合事業の場に持ち込みます。事業者によっては、本場さながらの衣装を身につけた介護士がディーラーを務めることで、非日常の空間を演出しているところもあります。これにより男性高齢者の参加率は、とても高くなっているのです。
おしゃべりを楽しむことが目的でデイサービスなどに通うことが多い女性に比べ、男性は目的もなくデイサービスに通うことを嫌います。その点カジノでは、ワクワクやちょっとしたスリルも味わえるので、男性も積極的に通いたいという気持ちにさせることができるのです。カードゲームで手札の数字を計算したり、チップを置くためにイスから立ち上がったりと、カジノは実は認知機能や運動機能の向上にも十分効果があるとされています。
今後は、こだわりが強く要望や要求が多いといわれる団塊世代が徐々に要介護状態になっていきます。そうなれば、デイサービスのプログラムなどは、現状のようなものでは満足してもらえなくなることが十分考えられます。カジノに限らず、さまざまなタイプの利用者の趣味や興味に応えられるプログラムの開発は、今後ますます必要になっていくでしょう。
また介護保険事業を考えると、財源不足から縮小方向になっていきそうな気配もあります。今は安定して運営できていても、介護保険事業だけに頼っていては、制度改正や報酬改定によって収益に大きな影響を受けてしまいます。そうならないために、介護保険外で収益の柱となるものを見つけておくといった動きはこれからますます加速していくと予想されます。
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